天空の古民家にて

ID164 渡邊 恵さん

鴨川の隠れ名所、「天空の古民家」にお住まいの、渡邊 恵さん(以下、めぐちゃん)を訪ねました。その名にふさわしく、車がやっと一台通れるような急な坂道をクネクネとひたすら登って行き、突然目の前に空が開けたところに、そこはありました。

嶺岡山の連なりが一望でき、人々の暮らしを眼下に見下ろすような(?)天空の景色に心を奪われました。

 

ーーこの景色を毎日眺めながら暮らすのは、瞑想的でしょうね。時空を超えた印象があります。

M はい。去年7月からこちらに暮らすようになりました。景色ももちろんですが、この古民家を初めて見た時に、一目惚れしてしまって。私のやりたいことを実現するには、ここしかない!と。

 

ーーまだ、こちらに来てから一年しか経っていないんですね!ものすごいなじみようです(笑)実は、めぐちゃんの噂は何年も前から聞いていたのですが、なかなかすれ違いでして・・・私が長南町の「あしたの国まちづくりの会」というNPOの事務局を退職したあと、めぐちゃんが後任で入ったのですよね。

 

M そうです。最初は事務局スタッフとして入り、NPO全体の運営に携わりましたが、最後の方は、NPOで運営していた“あしたの国シュタイナー学園”の手の仕事の教師として参加していました。

 

ーー「あしたの国まちづくりの会」は、千葉県長南町に21万坪の土地を所有し、そこにオーストリア出身の教育思想家ルドルフ・シュタイナーの思想を取り入れた全日制の学校を創るという運動を行っていました。私は、まだ本格稼働する前の1年間だけでしたが、ものすごいモチベーションを持続していかないとやっていけないようなところだったので、やめたときには完全に燃え尽き症候群になっていましたね。(笑)

めぐちゃんは6年間も活動されたそうですが、それだけでも尊敬の念でいっぱいです。千葉に来る前は、何をしていたのですか?

 

M 東京の短大の保育科を卒業したあと、幼稚園で8年間働いたのですが、常に何か違和感を抱えていて・・・。あるとき思い切って仕事を辞め、ずっと憧れていたイギリスへ1年間、語学留学に行きました。1年経った頃、知り合いの紹介でキャンプヒル共同体「ウィリアム・モリス・ハウス」へ訪れる機会を得ました。

キャンプヒルとは、シュタイナーの教えに基づいて運営されている「治癒共同体」で、そこでは主に知的な障がいを持つ人たちと、ハウスペアレンツとコワーカー(ボランティアスタッフ)が共同生活を営んでいます。日本で幼児教育を学んでいた頃から、シュタイナー教育の実践を学ぶというのは、私の願いのひとつでもありました。

さらに、ウィリアム・モリスという人は、「アーツ&クラフツ運動」の中心的人物で、私はその作品にも数年前から関心を持っていました。

そのウィリアム・モリスの名がついたシュタイナー共同体!これこそ、私が求めていた世界!と確信し、訪れてすぐにコワーカーへ応募する決意をしました。

 

ーー鴨川へ来る時もそうだったようですが、直感を信じて突っ走るタイプですよね(笑)

M そうなんですよ〜。その年の9月から2年間、ウィリアム・モリス・ハウスで暮らしました。今、みなさんに教えたりしている手仕事は、ほとんどここに滞在中に学んだものです。

 

ーーウィリアム・モリス・ハウスでの暮らしは、いかがでしたか?

M 何もかもが新鮮でした。特に印象的だったのは、「個」が大切にされていることです。私は日本で福祉の現場に携わったことがないので、はっきりとしたことは言えないのですが、垣間見るかぎりでは、施設等では、世話をする人とされる人がはっきり区別されているような印象をうけます。

でもここでは、「魂の質は、みんな一緒」というのが大前提にあるので、すごく個々が敬われていて、世話をする人とされる人が平等に向き合っていました。

 

ーーそれは素晴らしいことですよね。とはいっても、なかなか実生活で表現するのは難しい課題だと思います。では、それまでは福祉にはまったく縁がなかったんですか?

M 父がプロテスタントの教会の牧師だったので、社会的な弱者の方たちとの接点は、幼少の頃からありました。父だけでなく母も神学科を卒業しているのですが、結婚前まで肢体不自由児の全寮制の施設で働いたりしていましたし。

 

ーーそのようなご両親の後ろ姿を見てきたことも、今のめぐちゃんの生き方に大きな影響を与えているのでしょうね。ウィリアム・モリス・ハウスで、得がたい体験をしためぐちゃんですが、2年で帰国を決めたのはどうしてですか?

M 高齢だった祖母と一緒に暮らしたかったのと、私が学んだことを日本で活かしたい、少しでも日本を変えていきたいと思ったからです。本当に、微力なのですが・・・

 

ーーその感じ、わかります。あわマネーの人たちも、同じような想いをお持ちだと思います。一人ひとりは小さな雨粒のような存在かもしれませんが、みんなの想いが集まれば、大河のような存在になると信じています。

先ほど、初めてこの古民家を見た時に、やりたいことを実現できる場所と感じたと聞きましたが、それはここにつながってくる話ですね。

この部屋は、板張りと畳の広々とした空間で、人が沢山集まれそうですし。

M はい、アイルランド音楽のコンサートをやったときは、総勢55人もの人が、このひとつの空間を共有しました。あれは本当に素晴らしい体験でした。

また、今年からは上映会や、フェルトの手仕事講座も行っています。里山暮らしにアートや文化の活動が息づき、一人一人がその人らしく居られる場を作り出したいというのが夢です。

 

ーーめぐちゃんは、本当に才能が多岐に渡っており、あるときは保育士、あるときは手仕事の先生、またあるときはカレー屋さん?いのししラーメン屋さん??(笑)

すべてが、プロレベルな仕上がりなので驚きです。

これからも、あわマネー事務局企画で、めぐちゃんから色々なことを学んでいきたいと思っています。今日は、ありがとうございました。

M こちらこそ、ありがとうございました。

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